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【Slay the Spire】トッププレイヤーは何を考えているか?【適当訳】

 Slay the Spireのプレイヤーレベルは日々向上しており1、最上位プレイヤーに至っては7割もの勝率を叩き出す。そんなプレイヤーの一人であるJorbs氏が自身の思考についてまとめていたので、簡単(?)に紹介しようと思う。この記事には誤訳や独自解釈も含まれているので、しっかり理解したいなら原文を読むことを推奨する。URLはjorbs氏の配信から探してください(自分が貼ると怒られるだろうし)。

以下まとめ

 Slay the Spireは非常に複雑なゲームであり、自分が考えていることを言語化するのにも精神的負担が大きくかかる。ゆえにゲームをしながら頭に浮かんだことを列記していく。

 まず、Slay the Spireは負け筋を潰していくゲームだと考えている。これを数値化するのも成功させるのも非常に難しいので、意思決定を単純化するためにデッキを「強く」することを目指す。「強く」というのは特定のアーキタイプを目指したりゲームを壊すというより、どうなったら死んでしまうかという考えに基づいている。
 負け筋をリストアップし、それを数値化するだけなら他の誰よりもうまくできるかもしれないが、それには時間がかかりすぎる上にそれで意思決定が改善されるわけでもないので行う理由がない。実戦ではその地点で脅威となる状況は何かを考えている。終点で死なないためには1~3ターン目を強くすることが大事だが、これは道中の戦闘における被害の軽減にもつながる。
 その気になればあらゆる状況で3時間以上分析でき、勝率の向上にもつながるが、長期的に見ると特殊な状況でしか役立たない知見を得るのにエネルギーを費やしてしまう上に視聴者にとってもほとんど役に立たないのでそのようなことはしない。5000時間に1度しかないようなことを覚えても次にこの状況に出くわしたときには忘れてしまっていると思う。

 Slay the Spireにより精通するためには、カードやレリック、ポーション、敵などに関する知識を広げ深めることが重要になる。

 カードについて、個々のプレイで深く考察することはあまり必要ない。選択肢の比較にしても、性質が異なっていて比較にならないか、どれを選んでもあまり変わらないためである。似通ったカードで迷ったとしても、結局はそれを選ぶとどのような負け筋が発生するか?という考えに行き着く。コモンアタックのダガースローと毒の一刺しを例にすると、組めるシナジーに差があるので比較になりづらい。また、ダメージ量が大して変わらないため、エリートやボス対策という観点で選ぶことになるかもしれない。
 大事なのは、この比較は対称的で計算が難しいということである。二択問題で長考してもドラフト能力が高まるわけではない。それぞれのケースでプレイして、そのカードを選択した場合に生じる問題がその回の結果とどれだけ関係性があったか考察する、あるいは大量のプレイデータを用いて事後分析を行うことで理解を深められる。ただし、Spirelogsのようなものは自分のレベルに合ってないので関係ないし、過去のプレイでその比較があったとしても、それとは関係ない要因(プレイミスやイベントなど)で負けていることもある。
 レリックやポーションなど、カード以外のリソースに関しても同様である。初心者レベルなら壊れギミックを使用して強くなる方法を学ぶのが良い。熟練してきたら、ゲームを壊せなかった場合、どのように死亡リスクを軽減するかを学ぶ必要がある。それにはゲーム内のリソースが自分にどのような影響を及ぼすか理解し、次の戦闘ではどのような課題が存在しどのように対処すべきかを把握する必要がある。それらの問題解決の際も、他の戦闘で問題が発生しないように気をつける必要がある。また、壊れギミックの作り方も学ぶことになる。自分が壊れたデッキを作る頻度は中級者のそれよりも遥かに多いが、それはデッキを壊す方法をすべて理解しており、そのパーツが提示された時に正しく選択できるためである。また、デッキが壊れていない時における戦闘の対処法も分かっているので、レリックやゴールド、カードを獲得できる。すなわち、デッキを壊す方法が増えていく。
 敵への理解とその対策は、Slay the Spireを分析したいと思っている人のほとんどが苦手にしているスキルだと思っている。推測するに、デッキ構築型ゲームから来た人はデッキ構築を考えるだけで満足してしまうためだろうか。しかし、6000時間もプレイしていれば、ありとあらゆる戦闘においてデッキがどのような挙動をするか正確に把握できるようになる。ハースストーンなどで相手の使うデッキに対する相性等を抜きにしてデッキ構築論を語っても意味がないのと同じく、Slay the Spireもそのデッキで敵と戦った時にどうなるかを理解していなければ、デッキ構築論を語っても無意味である。
 そのデッキに直接関係する戦闘は10~15回程である。これには雑魚戦、エリート戦、イベント戦、そしてボス戦が含まれる。これらの戦闘の理解度によってルート選択の判断が大きく変わってくる。1ターン目と2ターン目の展開は敵によってかなり異なっており、さらにデッキに内包される重要な変数(天賦や骨付き肉がわかりやすいか)の影響も受ける。

 このゲームの要素を理解するためには、非常に細かい部分まで考察しなければならない。そしてその内容はトッププレイヤーの間でも意見が割れるし、その意見もプレイングの上達やパッチによって絶えず変化する。
 正しい選択肢を見つけようとしても、運に左右されてしまうことがしばしばある。間違った選択肢を8回連続で選び、運悪く成功してしまったら、それを正しい選択と勘違いしてしまうだろう。そしてそれを修正するのに時間がかかってしまうし、アップデートによっても簡単に変わってしまうかもしれない。ゆえに自分はSlay the Spireでは固定観念を持たないことにしている。ゲーム空間の一部分だけをこれが正しいと盲信するよりも、ゲーム空間全体を探索するほうがはるかに有益なのだ。

 Slay the Spireの上達は、現地点で何を入れればデッキを一番良く改善できるかという質問に答えることによっては成されない。正確に答えることが難しく、たまたま近縁なカードとの選択にならないと意味がないからだ。ゲーム全体に対する理解度を深め、各要素がどのようにつながっているかを把握することが大事である。あまり重要ではないので考える必要がないという意味で近いと思われた判断が、一方が他方よりも優れている理由がすぐにわかるので考える必要がないという意味で当たり前に思えてくるのだ。どちらの状況でも、真剣に判断していたずらに脳を疲労させる代わりにSlay the Spireのゲーム空間全体を吸収・考察・実証できるようになる。
 もちろん1つの判断について真剣に検討することが間違っているわけではない。現在プレイ中のゲームで勝ちたいと思うなら、悩ましい選択に15分割けば正しい選択をする能力が高まるだろう。これを何度も繰り返せば、そのゲームでは有利になる。しかし、このプロセスを辿っても早く上達することはないと思われる。ゲームを始めたばかりなら、判断に関わる変数を覚えるためにExcelで計算すると役立つかもしれないし、そもそもゲームで複雑な判断を行ったことがないなら、その方法を学ぶのが良いだろう。しかし、そういった判断を20年以上続けてきた自分の経験からすれば、それらのことにエネルギーを費やすより、Slay the Spireを何度もプレイしてゲーム内の相互作用に対する理解を継続的に深めていったほうが良いと思う。そして何より自分や視聴者にとって楽しくない。

以上のことから、自分自身でSlay the Spireの上達法を考えてくれればと思うし、他のゲームや現実世界に応用できるヒントを見出してくれれば幸いだ。


  1. アップデートによって易化しているのもあるが。